様々な運動や動作のタイトルがバーナムピアノテクニックの各曲に付いています。そのタイトルから連想される動作を実際に腕や手首、指を使ってすることで、タイトルに見合った音色や響き、キャラクターを表現するテクニックを学ぶことができます。
今回は各巻で何度も繰り返し出てくる「深呼吸」を取り上げ、和音をたっぷりと響かせるための動作と注意するポイントを解説します。
「深呼吸」の目的
基本的には和音をたっぷりとした響きで弾く練習です。
(バーナムピアノテクニック導入書 グループ3)
2グループに1回くらいの頻度で出てきます。
最初は主和音と属七の和音だけですが、回を追う毎に和音の種類が増えたり、転回形に伴うポジション移動が出てきたりと難易度が上がっていきます。
(バーナムピアノテクニック1 グループ1)
(バーナムピアノテクニック1 グループ3 Ⅳの和音と属七が四和音で)
(バーナムピアノテクニック1 グループ5 転回形)
(バーナムピアノテクニック2 グループ5 減七の和音)
和音進行の型、それぞれの転回形の指使いも習得できる練習曲です。
練習のポイント
実際に深呼吸しながら弾く
話す時、歌う時など声を出すときには必ず呼吸を伴います。
声を出す前に息を吸い吐きながら声を出す。
大きな声を出すときには吸う息も吐く息も量が増えます。
ピアノは呼吸しなくても音を出せる楽器ですが
音楽を奏でるためには呼吸しながらひくことが必要です。
ピアノでたっぷりした音を出したいときにも実際に呼吸する空気の量を増やし
たくさん息を吸ってしっかり息を吐きながら、つまりは「深呼吸」をしながら弾くと
豊かな響きの音を出すことができます。
本当に深呼吸しながら弾いてね。
腕にも深呼吸をさせる
比喩的な表現ですが
弾く前に肘を少し持ち上げ
弾くときにすとんと下ろす
という動作です。
肘を上げた時の位置エネルギーを下ろす運動エネルギーに変換して音を出すということなのですが
エネルギーを息に置き換えて
肘を上げる時に吸った息を下ろす時に吐いて鍵盤に吹き込んでいく
とイメージするとわかりやすいと思います。
肩を上げない
肩が上がると体の重心が上がってしまい
余計な力も入ってしまって
深い息とともに肘を自由に動かすことができなくなるので
(ほかの体の部分も固まって自由がきかなくなります)
良い響きの音を出す妨げになります。
肩が上がって体が固くなるといい音は出ないし、肩凝るしでいいことは一つもないよ。リラックスして肩は下げよう。
手首をぐにゃぐにゃさせない
肘を下ろすことで吐き出した息を鍵盤に接している指先まで伝えないといけないのですが
そのためには肘から指先までが一本の棒のようにつながっている必要があります。
このてこの棒の途中が折れてぐにゃっと曲がってしまったら四角い積み木は持ち上がりませんよね。
手首がぐにゃぐにゃしているとそこでせっかくのエネルギー(息)が逃げてしまうので手首は固定しておきましょう。
指先でしっかり支える
固定された手首を無事通過した息が鍵盤にたどり着くまでには関門があと2つ。
まず手のひらがつぶれないように指の第3関節をへこませないようにしましょう。
そしてようやく最後の関門、鍵盤に接する部分の指先まできました。最後まで油断禁物。
第1関節を凹ませず、指先を鍵盤をつかむようにして
ここまでの動作によって生じた重さを支えて鍵盤に伝えます。
特に5の指には注意が必要です。
指を寝かせて指の側面で弾いてしまいやすいのですが
そうなると5の指が鍵盤の底までたどり着かず音が鳴らないので
第1関節を丸くして指先を立てて鍵盤をつかむ意識をしっかり持っていてください。
下の写真はダメな例よ。
こうならないように気を付けて。
小さいお子さんは指の関節がまだ弱くて凹みやすいので特に注意して練習してください。
タイミングをそろえる
たっぷりした音を出すためには下の3つの瞬間をそろえましょう。
- 息を吐く
- 肘を下ろす
- 指先が鍵盤の底にたどり着く
例えば野球だったら
ボールが過ぎ去ってからバットを振っても球に当たらなし
バットの運動エネルギーが最大になった瞬間にボールをとらえないといい当たりにはなりませんよね。
息を吐ききってから肘を下ろしたのでは息を吐くときのエネルギーを使えないし
肘を下ろす前に指で弾いて音を出してしまっては肘の運動エネルギーが音のエネルギーになってくれません。
タイミングを合わせることは何事においても大切なことです。
タイミングがそろうと楽にたっぷりした響きの音が出るよ~
まとめ
たっぷりした和音を良い響きでひくためには
深呼吸をしながら
腕や体に余計な力は入れず
ベートーヴェンの悲愴ソナタの冒頭の和音を弾くときなどに応用してください。
そしていつも豊かで良い響きかどうかを
自分の耳で聞いてよく確かめてくださいね。